(3)「モデルのJちゃん、Nちゃん」
|
私はグラフィックデザイナーである。広告媒体によくモデルを起用することがある。“モデル”といっただけで羨望の眼差しで見る人が多いが、最近のモデルのレベルには「??」がつく。勿論、素晴らしい素敵なモデルも大勢いるが、中には「ええ〜、モデルなの?」っていう娘もいる。ち? 私はグラフィックデザイナーである。広告媒体によくモデルを起用することがある。“モデル”といっただけで羨望の眼差しで見る人が多いが、最近のモデルのレベルには「??」がつく。勿論、素晴らしい素敵なモデルも大勢いるが、中には「ええ〜、モデルなの?」っていう娘もいる。
昔は、容姿端麗、文句のつけようがない、まさに“選ばれた人”の職業のはずだったのだか、最近は容姿に関係なく、本人がなりたければほとんどの人がモデルになれる。というか、仕事のカテゴリーが多種多様なのである。
ファッションショーやCM、ポスター、雑誌のモデルから、駅前で見かけるサラ金のテッシュ配りまでである。
私もできるだけオーディションで選びたいのだが、ついつい写真&プロフィールだけで決めてしまうことがある。駅や空港でよく待ち合わせをするが、周辺のどこを見てもモデル風の女性が見当たらないことがある。こんなときカメラマンらと、 「アソコに立っている娘かな?」。 「あれは違うだろ。今、田舎から出て来たって感じだよ」。 「じゃあ、あの娘は?」。 「あれはどう見ても夜の蝶だよ」とか言っていると、やや、その夜の蝶が近づいてくるではないか。 「あの〜…」。 (何があの〜だよ。あっちへ行って)の願いも空しく 「○○事務所の××です。今日よろしくお願いします」だって。(今日もヘッタクリもない、カメラマンの目もうつろじゃないか。できればこのまま帰りたい。でももう手遅れ)。ここからカメラマンの苦労が始まる。いかに夜の蝶でなく、モデルに撮るか…。(あ〜あ、オーディションすれば良かった)。こんなことはよくあることである。
Jちゃんは、子供の頃からチョコレートのCMなどで活躍していたモデルで、私も結構使っていた。あれは、旅行会社のビデオ撮影で四国ロケのことである。
高松空港に降りて早速撮影開始。空港をバックにJちゃんアップでコメント、 「高松空港に着きました。今回の四国の旅は、金比羅様にお参りして…」と言うところを、Jちゃん、 「高松空港に着きました。今回の四国の旅は、キンピラ様にお参りして…」とやってしまった。(おいおい、キンピラゴボウかよ)、もう大変、スタッフの大爆笑が6分間は続いた。そして、テーク2 「高松空港に着きました。今回の四国の旅は、…」までくると、Jちゃん吹き出してしまう。スタッフも必死に笑いをこらえているから一斉に笑ってしまう。テーク3,(笑う)。テーク4(笑う)…、もう大変、テーク9〜10あたりでやっとOK。お陰で以後の撮影は和気あいあいだった。
Nちゃんは19歳、初々しいモデルだった。東北地方へロケに行ったときのこと。 三沢空港から牧ノ原温泉などを撮影し、奥入瀬渓谷から十和田湖方面へ。途中、奥入瀬のドライブインで昼食風景、そして、十和田湖遊覧の撮影とスケジュールもきつい日だった。カーブが多い道路というのに、ドライバーも時間を気にして飛ばし気味。朝から温泉に入っての撮影でNちゃんも気分上々、と思い気や、すっかり車酔い。ドライブインに到着し、車から降りたとたんヘナヘナと地面に座り込んでしまった。 (これは困ったぞ)。でも時間がない…。
ここのドライブインの名物は、ジャンボ焼き肉(ん、不吉な予感)。Nちゃんも席につき撮影開始、肉などを焼いているときからNちゃん辛そう。そして、肉を箸で挟さみ、笑顔で、 「わあー、凄いボリューム、いただきまーす」と口に入れたとたん、 「ゲーッ!!!」みんな吐いてしまった。(やっばり)。でもNちゃんさすがプロ、 「すみません、もう一度、すみませーん」。再び、 「わあー、凄いボリューム、いただきまーす」。 「ゲーッ!!!」。 「すみません、もう一度、すみませーん」。 「わあー、凄いボリューム、いただきまーす」。 「ゲーッ!!!」。 その内、肉も黒焦げになってくるし、観光客も集まってきて人だかりの山、 「わあー、凄いボリューム、いただきまーす」。 「ゲーッ!!!」。 とうとう観光客も、 「あ〜あ可愛そう、ちょっと無理よ」などという声が聞こえてくる始末。
どうにかNちゃんのプロ根性でOK。この後、Nちゃんすっかりダウンしてしまった。十和田湖遊覧もキャンセル、モデルなしの自然豊かな十和田湖がきれいだった。(トホホ…)。
Nちゃんもう結婚しただろうか、「肉は見るのもイヤ!」なんて言ってたけど、今も肉は嫌いなんだろうか。 (0312)
|
|